アメリカンタコスとの違い

さて、ここではメキシカンタコスとアメリカンタコスの違いを説明いたします。今まではメキシカンタコスのことしか紹介していなかったので、アメリカンタコスについて説明いたします。
現在のアメリカで最も人気のあるタコスは、1940年代の後半に発明された「ハードタコ」です。ハードタコはトルティーヤを、隙間を空けて半分に折り曲げ、油で揚げた硬い「タコシェル」に炒めた牛挽肉、レタス、トマトを隙間に詰めて食べます。タコシェルは大量生産の既製品が普及しており、北米の至るところで食べることができる非常にポピュラーな料理ですが、ピザなどと同様にアメリカ料理の1つとして定着しているために、本場のタコスとアメリカ生まれのタコスが異なることを認識していないアメリカ人も多いよう。


また、ハードタコに呼応する形で広まった「ソフトタコ」は、小麦粉を原料とするトルティーヤ(フラワー・トルティーヤ)にハードタコと同じ具を包んで食べるスタイルです。北米では一般にコーン・トルティーヤ=ハードシェル、フラワー・トルティーヤ=ソフトシェルと認識されています。ソフトタコはブレックファスト・タコとしてタコ店以外のレストランやファストフードチェーンストア"チェーン店のメニューにもみられ、卵やハムなどメキシコではあまり用いられない具材と組み合わされることもあるようです。
メキシコ生まれの移民が経営するレストランでも、アメリカ式タコスを提供しないと経営的に成り立たなかったこともあり、本場のタコスを提供せずに、ハードタコが「本格メキシコ料理」称してメニューに並べられたことも少なくありませんでした。しかし、メキシコからの移民が増加し彼らの経済的、社会的影響力が増すと、本場のタコスの需要が生まれ、具の多様性ではメキシコに及ばないもののメキシコで提供されるタコスと大差ないものがアメリカ国内でも味わえるようになってきています。
タコスのバリエーションとして、コーン・トルティーヤを高温でさくさくに揚げたパフィ・タコや、アメリカ合衆国先住民の薄い揚げパン、フライブレッドにタコスの具をのせたインディアン・タコ(ナバホ・タコ)などがあり、インディアン・タコは、しばしばパウワウなど先住民の文化に関連した催し物の会場で食べることができます。また、カリフォルニア州では昔から、直径15cmくらいのトウモロコシのトルティーヤを揚げ、肉(牛挽肉、細かく裂いた牛肉、鶏肉、豚肉など)、チーズ、レタスとトマトなどを詰めたカリフォルニア・タコが食べられていました。